鎖骨骨折における後遺障害
鎖骨骨折における後遺障害
1 鎖骨骨折の概要
交通事故に遭い、肩等を強く打ちつけてしまうと、鎖骨を骨折することがあります。
鎖骨とは、肩甲骨の上部にある細長い骨のことです。鎖骨骨折は、鎖骨の骨折箇所に応じて、以下のような傷病名となります。骨折箇所は、レントゲン、CT撮影で診断されることになります。
①鎖骨遠位端骨折(鎖骨の肩側部分の骨折)
②鎖骨骨幹部骨折(鎖骨の中央部分の骨折)
③鎖骨近位端骨折(鎖骨の首側部分の骨折)
2 後遺障害の概要
(1) 後遺障害の種類
鎖骨骨折による後遺障害として考えられるものは、以下のとおり、機能障害、変形障害、神経症状の3つになります。
(2) 機能障害
機能障害とは、鎖骨骨折により、肩関節の可動域(関節を動かせる範囲)に制限が生じることです。特に鎖骨遠位端骨折の場合には、肩の可動域制限が生じる可能性があります。
可動域は、「関節の機能障害の評価方法および関節可動域の測定要領」に従って測定する必要があります。機能障害の程度は、健側(被害を受けていない側)の可動域と比較して障害を残している側の可動域角度がどの程度制限されているかによって判断されることになります。
例えば、右鎖骨遠位端骨折がある場合、左肩(健側)の可動域角度と比較して、右肩の可動域角度が4分の3以下であれば12級6号、2分の1以下であれば10級10号の認定となります。
可動域角度の測定結果は後遺障害の認定に直結しますので、交通事故によって鎖骨骨折された方は、治療中及び治療終了時、可動域角度の測定を正確に実施してもらう必要があり、後遺障害診断書にも正確に測定結果を記載してもらう必要があります。
(3) 変形障害
変形障害とは、鎖骨骨折の治療後、癒合(結合)不全等により、骨が変形した状態で固定してしまうことです。
肩の部分を露出すると変形が明らかにわかる程度のものの場合、鎖骨に「著しい変形を残すもの」として12級5号の認定がされます。変形がエックス線写真によってはじめて発見し得る程度のものは「著しい変形を残すもの」には該当しませんので、注意が必要です。
変形については、後遺障害診断書の「体幹骨の変形」の欄に記載してもらう必要があります。
(4) 神経症状
機能障害、変形障害が無くても、骨折部に痛み・疼痛が残る場合が存在します。この痛みが、他覚的に証明できる場合には、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級13号が認定されます。他覚的な証明ができない場合であっても、神経系統の障害の存在が医学的に説明可能な場合には、「局部に神経症状を残すもの」として14級9号が認定されます。
後遺障害診断書には、自覚症状として存在する痛みを記載してもらうと共に、他覚的な神経症状の原因を記載してもらえると良いでしょう。
(5)慰謝料について
〇機能障害で10級10号が認定された場合の慰謝料と労働能力喪失率は下記の通りです。
自賠責基準…190万円
裁判基準…550万円
労働能力喪失率…27%
〇機能障害で12級6号、変形障害で12級5号、神経症状で12級13号が認定された場合の慰謝料と労働能力喪失率は下記の通りです。
自賠責基準…94万円
裁判基準…290万円
労働能力喪失率…14%
〇神経症状で14級9号が認定された場合の慰謝料と労働能力喪失率は下記の通りです。
自賠責基準…32万円
裁判基準…110万円
労働能力喪失率…5%
執筆:弁護士 浅倉稔雅
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